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産業建設常任委員会の行政視察研修でした

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admin 2012-11-11 21:00
産業建設常任委員会の行政視察研修に行ってきました

  視 察 地  滋賀県栗東市、岐阜県中津川市、長野県松本市

  視察目的 栗 東 市 … アグリの郷栗東について
中津川市 … 中津川市中心市街地活性化基本計画について
松 本 市 … 松本市次世代交通政策基本方針について
「ゾーン30」への取り組み状況について

  視察期間 平成24年11月5日(月)から11月7日(水)
  視 察 者 産業建設常任委員会委員
   委員長        岸田益雄
   副委員長       増富義明
   委員         細井英輔、相原一永
                     河野利英、高木 純
建設部長         松岡一雄(随行)
議会事務局事務主任    筒井一哉(随行)(計8名)

【滋賀県栗東市】 『アグリの郷栗東について』

1.視察の目的
 栗東市では21世紀を目指した活力ある農業の展開を図るため、農業の
 経営体の強化と産業としての農業基盤を確立する施策の1つとして、経
 営基盤確立構造改善事業を計画し、平成12年7月に「アグリの郷栗東」
 (道の駅)を整備している。
 この「アグリの郷栗東」は近年注目されている6次産業を行っている施設
 であり、1つの施設内で農産物等の加工、販売を行うことができる。
 吉野川市においても、農産物の直売所や加工物の販売所は存在するが、1
 つの施設で加工、販売を行っている施設はない。
 そこで吉野川市における農業振興として6次産業化への取り組みの可能性
 を模索するため、「アグリの郷栗東」を視察することとした。

 ※6次産業とは
 『農業、水産業などの第1次産業が食品加工(第2次産業)・流通販売 
 (第3次産業)にも業務展開している営業形態』

2.研修内容等
 (1)アグリの郷栗東(農畜産物処理加工施設)設置目的
 1.転作作物を原料とした市場競争力が強い農産物の製造販売。
 2.次世代の農業の担い手のために農業振興が図れる雇用機会の創出。
 3.環境こだわり農業の推進拠点として、環境保全に配慮した安全な農産
   物としての強いブランドイメージを与える等、消費者ニーズに応える
  「安心・安全・新鮮な」市場競争力の強い農産物の加工 販売。
 4.野菜の直売施設を併設し、農業者と消費者との交流を図れる加工・販
   売・体験等の機能を有した施設。
 5.市内の農産物をアピールする発信拠点としての機能を充実して利活用
  を図る。

 (2)建設概要及び管理運営について
 1.建設費用  4億0,560万円  (造成費を含む)
       (内 国費1億円、県費1,000万円)
 2.管理運営主体
 【名 称】:栗東農産物加工有限会社(指定管理)
 【設 立】:平成12年7月28日
      (道の駅オープンは平成12年11月11日)
 【資本金】:375万円(内 栗東市 95万円)
 3.管理運営
  リーダー会議を1週間に1回、取締役会を1か月に1回行い、運営方針
  や経営方針を決めている。取締役会は栗東市副市長、農業者の代表、
  農協、商工会で構成されている。
 (3)施設の従事者
 1.経営及び業務     店長1名、社員1名  計2名
 2.加工・販売従事者   約30名(パート雇用)
 (4)加工品
 1.豆腐工房 栗東産の大豆を100%使用し、おからの出ない天然にがり
  豆腐(まるっぽ豆腐)を作る。アグリの郷栗東の目玉商品である。
 2. みそ工房 栗東産の大豆と米を使用した減塩無添加みそを作る。
 3.もち工房 栗東産の羽二重もちを使用。
 4.うどん・そば工房
   栗東産のそば粉、小麦粉100%使用を目標とする。
 5.パン工房 栗東産小麦100%原料にした無添加手作りパンを目 
   指す。地元の米粉を使用したパンの研究・販売も手がける。
 6.ジェラート工房
   地元農産物を使用したイタリアンジェラートを作る。
 7.そば・うどん・パン道場
   そば・うどん・パンの加工体験を行う。
 8.レストラン工房
   地元の新鮮な農産物及び加工品を使用した料理を提供する。
 (5)野菜直売所
  新鮮な野菜を提供する場所として直売所が併設されている。
  事務局は農協で、生産者より15%の手数料を徴収し、販売している。
  手数料15%の内訳は、12%がアグリの郷栗東、3%が農協の事務手
  数料となっている。
  栗東野菜出荷組合から毎日1名が当番で勤務しており、生産者が直接消
  費者と接することで、消費者の声やニーズが聞ける体制をとっている。
 (6)今後の課題や目標
  施設がオープンして12年が経過し、商品の目新しさがなくなってきて
  おり、新しい商品の開発が必要となっている。
  加工品は良い物を作っていると自負しているが、売上は徐々に下がって
  きている。商品開発だけでなく、販売の方にも力を入れる必要がある。
  新幹線が見える数少ない道の駅であることをアピールし、集客率の向上
  を目指したい。

<研修時の主な質問事項>
Q:年間売上とその内訳は。
A:年間売上 約1億2,000万円
  野菜直売    10?16%
  レストラン工房 約10%
加工品販売   約80% (内 豆腐販売 6%)
Q:土地は借地契約をしているのか。
A:土地は市が地権者と借地契約し、支払いをしてる。
 総面積は5,128?で年間470万円である。
Q:販売している商品の中に他県の商品がある理由は。
A:本施設は観光客だけでなく、普段の買い物に利用している人も多い。そのため、買い物客の利便性を考え、いろいろな日常商品を販売している。
 また、ただ販売するのではなく、一般のスーパーなどにはない、こだわりをもった商品を取り扱っている。
Q:アグリの郷栗東の加工品と他自治体の特産品等を交換して販売する考えは
A:そういう話をいただけるのであれば、前向きに検討したい。

3.まとめ
 アグリの郷栗東は平成12年に建設された施設ではあるが、6次産業とい
う考え方にいち早く目を付け1つの施設内で食品の加工・販売を行っている。
 加工品では、転作作物である栗東産大豆を100%使用した「まるっぽ豆
腐」という豆腐を開発して販売したり、レストランでは、地元食材を使った
メニューを提供するなど、地産地消や耕作放棄地対策という観点からも重要
な施設であるといえる。
 また、体験道場では、そば・うどん・パンの加工体験を行うことができ、
観光施設としての役割も担っている。

 吉野川市の農業振興を進めていく上で、地域の6次産業化は将来性のある
取り組みであり、現在、農産物の加工又は販売しか行っていない施設も規模
拡大や事業運営の改善等により、6次産業に移行できる可能性がある。
 6次産業については、近年提言された思考であり、地域の農業振興のため
にも、6次産業に対する国・県の制度等を把握し、先進地の事例等を研究す
ることが必要であると思われる。

【岐阜県中津川市】 『中津川市中心市街地活性化基本計画について』
 1.視察の目的
  中津川市は平成19年12月に中津川市中心市街地活性化協議会を設立
  し、平成20年7月には国から中心市街地活性化基本計画の認定を受
  け、官民が連携を図りながら、中心市街地の活性化に取り組んでいる。
  本市においても、JR鴨島駅前の中心市街地はかつての賑わいを失い、
  中心市街地活性化への取り組みは、市の発展に欠かせない喫緊の課題と
  なっている。
  そこで中津川市の中心市街地活性化への取り組み状況や成果についてお
  聞かせいただき、本市中心市街地活性化推進の一助としたい。

 2.研修内容等
 (1)中津川市の中心市街地の現状
   中心市街地の人口は年々着実に減少していた。
  また、高齢化率も上がっており、市全体では25.2%に対し、中心
   市街地では35.5%と非常に高くなっている。
    商店街での市民の買い物離れや後継者不足など、商店街の商店数の
   減少は右肩下がりで推移、それに輪を掛けるように平成9年から平成
   10年にかけて中心市街地にあった大型店舗の撤退があり、歩行者数
   も軒並み右肩下がりに減少していた。

 (2)中津川市中心市街地活性化協議会
   中心市街地活性化推進のために、まず組織作りとして中心市街地活性
   化協議会を平成19年12月に立ち上げた。
   必須構成員である商業系の商工会議所と市街地系には中津川市ふれあ
   い公社内に中心市街地活性化推進室を設置し、市職員を出向させて組
   織、また任意構成団体を関係各所より選任して、商工会議所の会頭を
   協議会長、副会長には市副市長、以下オブザーバー、アドバイザーを
   含め全26名で組織した。
    事業推進については、中心市街地活性化協議会の下に事業委員会を
   設置し、協議会委員を事業ごとに配置し、進捗状況を把握している。
 (3)中心市街地活性化基本計画
   平成20年7月9日に国の認定を受けた中心市街地活性化基本計画
   は、中津川駅の南に広がる商店街のエリアを中心とする区域を設定
   し、「平成の中山道中津川宿の創造」を目標に上げ、基本計画に取り
   組んでいる。

   中心市街地活性化基本計画では、中心市街地の状況を踏まえ、次の3
   つの課題に対し、まちづくりに取り組んでいる。
  1. 自らが誇れるまちの創出
  2.来訪者が快適に来訪できる都市機能の向上
  3.魅力ある商店街の形成
 (4)中心市街地活性化のための主な事業
  1.にぎわいプラザ利活用促進事業
   昭和52年に営業を開始したダイエーが平成10年に撤退し、空きビ
   ルとなっていたため、平成12年に市が取得、平成18年に本格的な
   改修を開始し平成19年6月から地域交流センターとして全面利用を
   始めた
    現在では地域活性化の拠点施設、子育て支援施設、大学のサテライ
   ト教室などを館内に誘致している。
   4階には行政スペースがあり、商工観光部、文化スポーツ部、教育委
   員会事務局といった機能を設置している。
    1階には平成23年7月から地域の特産品を一堂に集めた「にぎわ
   い特産館」をオープンし、約70店舗が入っている。
  2.中山道中津川宿六斎市事業
   基本計画のソフト事業のメイン事業である。
   六斎市の由来は、毎月3と8のつく日が月に6回あり、その日に市が
   開かれていたことに由来する。
   現在は商店街を中心に実行委員会を設立し月1回の開催で52回を数
   える
    毎月、入り込み客数として平均1万人の人出があり、遠くは市外か
   らも訪れている。
    六斎市を盛り上げるため、官民共同でこのソフト事業に取り組んで   いる。
  3.おもてなし事業
  「日除け暖簾(のれん)」
   商店街ごとに暖簾を色分けして、店の前に展示。
   暖簾には「おもてなシール」が貼ってあり、その店でできるおもてな
   しを示している。
   これは中津商業高校の生徒からの提案である。
  「ウインドウギャラリー」
   商店のウインドウに絵画や写真などを飾り、ギャラリー化して毎年展
   示会を行っている。
  「貸し電動アシスト自転車」
   中津川市は坂が多いため、 電動アシスト自転車で楽に市内を回っても
   らおうというもの。
   市内企業で製造されたものを無料で貸し出している。
  4.本町景観整備事業
   中津川市の中心市街地には明治、大正、昭和時代の面影を残した建物
   が並んでいる。
   特に本町地区は景観整備計画の重点地区に指定され、本町中山道景観
   協議会を立ち上げ、地区景観修景案を作成し、うだつや格子の見える
   街並みづくりに取り組んでいる
  5.旧ユニー跡地開発事業(新図書館建設事業)
   ハード事業のメイン事業として、総事業費18億円を見込んでいた
   が、市長交代により現在は中止となってしまっている。

 (5)中心市街地活性化の数値目標
   活性化基本計画には数値目標が必要となっており、中津川市では4つ
   の数値目標を挙げている。
  1.観光客入り込み数
   平成20年度に36万人強まで入り込み客数が増えたのは、毎月1回
   六斎市を開催している結果である。
   平成23年度については、東日本大震災の影響と天候の影響による減
   少がみられるが平成24年度は36万人を超える見込みである
  2.中心市街地居住人口
   本来は分譲マンションがもう1棟建つ予定であったが、計画がなくな
   ったため、目標値には達しない状況となっている。
   マンションは1棟完成してはいるが人口減少に歯止めはかかっていな
   い
  3.中心市街地歩行者数
   平日9時から19時までの歩行者数を5箇所で調べ合計数を示してい
   る。平成19年度までは右肩下がりであったものが、平成20年度の
   基本計画以降、徐々に街中に人が増えてきている。
  4.商業店舗数
   中心市街地の5つの商店街振興組合の会員数を示している。
   これについても、平成19年度までは右肩下がりであったものが、平
   成20年度の基本計画以降、横ばいにまで持ち直している。
(6)今後の課題や目標
   行政と商工会議所が密接に会議を開き、商店街の声も聞き、行政の声
  も伝えることができるようになったということは、地域が活性化してき
  たことの要因だと思っている。しかし、まだまだ行政指導型であるとい
  うことが課題となっている。
   今年度、商店街の実態調査を計画している。この調査で商店街の状況
  を詳細に把握し、今後、予算を注ぎ込んで事業を進めていく費用対効果
  があるのか検証する。
   15年後のリニア中央新幹線開通に伴い、リニアの玄関口としての顔
  づくりをどうするのかという課題もある。
  「観光中津川日本一づくり」をキャッチフレーズとし、地域の中で日本
  一を探していく。その1つが菓子であり、日本一の栗きんとんである。
   行政はマーケティングが不得手であるため、これからは数字目標を具
  体化し、マーケティングにも力を入れていきたい。

<研修時の主な質問事項>
Q:にぎわいプラザの購入費は。
A:購入費は約3億円であるが、その後、改修工事や耐震補強工事で約10億円をかけている。
Q:商工会議所と行政が定期的に会議を開いているということだが、その効果は。
A:行政、商工会議所、商店街の役割がそれぞれ決まっているため、当然打ち
合わせをしないといけない。
 以前は疎遠だった関係が、基本計画を策定したことにより、連携がとれる
ようになってきた。

3.まとめ
 全国的に中心市街地の衰退が進む中、中津川市のおいても、相次ぐ大型店
舗の撤退、商業者の高齢化、後継者不足により、中心市街地の衰退化が顕著
になっていた。
 中津川市では、こうした課題に取り組むために平成19年12月に中津川
市中心市街地活性化協議会を設立し、平成20年7月には国から中心市街地
活性化基本計画の認定を受け、官民が連携を図りながら、数々の事業を展開
し、中心市街地の活性化に取り組んでいる。その結果、少しずつではあるが
効果が現れ、市民の協力も得られるようになってきている。

 吉野川市においても、鴨島駅前の中心市街地商店街の衰退は顕著であり、
長年の懸案事項である。
 現在、吉野川市でも、新しい公共担い手創出事業を活用し、かもじま駅前
にぎわい創出事業として、かもじま駅前まちづくり会議を中心に低炭素活性
化まちづくりを目指し、市民フリーマーケットやその他数々のイベントを開
催し、中心市街地の活性化を図っている。
 しかし、商店街には未だ空き店舗も多く、人通りも疎らであり、今後も先
進事例を参考にもう一歩踏み込んだ市街地活性化策に官民を挙げて取り組ん
でいかなければならない。

【長野県松本市】 『松本市次世代交通政策基本方針について』
『「ゾーン30」への取り組み状況について(中町通りの取り組み)』

1.視察の目的
 本年、全国各地の通学路や生活道で重大な交通死亡事故が多発し、自動車
 社会にあって歩行者等の安全確保は重要な課題であることが再認識させら れた。
  吉野川市においても、各学校の通学路や新築移転される麻植協同病院の
 周囲道路など歩行者の安全対策を考えなければならない道路は多く存在す
 る。
  松本市は次世代交通政策基本方針を策定し、車を優先した社会からの転
 換を図っており、その中で「交通のまちづくり」による市街地の活性化や
 新しい交通安全施策である「ゾーン30」にも取り組んでいる。
 そこで、松本市における交通施策や「ゾーン30」への取り組み状況、効
 果などをご教示いただくこととした。

2.研修内容等
●松本市次世代交通政策基本方針について
 (1)自動車優先社会がもたらした松本市の現状
  1. マイカー利用が71.9%と高い
  2.公共交通利用者は5%に満たない状況
  3. 毎年、利用者が減少し、公共交通サービスも低下
  4.自動車移動できない人の交通手段はなくなり、まちの来街者が減少
  5.郊外の小売店販売額は、駅周辺の4倍
  6.家庭から排出する温室効果ガス排出量の約3割はマイカー
  7.中心市街地の空き地の駐車場化

(2)人や環境にやさしいまちづくり・「次世代交通政策」の取り組み
 ○ 自動車の利用にも一定の配慮をしながら、中心市街地における「歩行
  者優先ゾーン」の設定
 ○ 歩行者、自転車、公共交通など、道路空間の再配分
 ○ 中心市街地の活性化、居住空間の確保を推進
(3)次世代交通政策基本方針の3つの基本理念
  10年先、20年先を見据えた「松本のまちづくり」について、市民、
  関係機関・団体と議論・検討を重ね、松本市が目指す、新しい交通体系
  による将来のまちの姿を「まちづくりビジョン」としてまとめる。

【基本理念】
 1.「車を優先した社会」の転換
 2.歩行者・自転車・公共交通の優先
 3.エコで快適な移動により人が集う「交通のまちづくり」

(4)松本市が目指す「まち」の姿
 1.まちは、限られた空間の中で、多くの人が「住む」、「働く」、
  「憩う」、「楽しむ」など、高密度に都市活動をする場
 2.中心市街地は、都市の歴史や文化が集積する場所であり、人々の生
  活の源である
 3.まちは、商店街の活性化だけではなく、若者、高齢者、子ども、親
  子連れ、観光客など、様々な人たちでにぎわい、様々な都市活 動が
  集積して交流が展開されている
 4.目的がなくても、行けば何かがあると期待させる空間が「まち」

(5)新しい交通体系によるまちのイメージ
 ○ 安心で多様な都市空間に住まう魅力が高まる
 ○ 若者が勉強をしたり、集まって会話をしたくなる
 ○ お年寄りが買い物をしたり、集まって談話をしたくなる
 ○ 親子連れが安心して、気軽に買い物や散歩ができる
 ○ 週末や仕事帰りには、家族や仲間とともに学び、憩う場所となる
 ○ 子どもが安心してまちで遊べる
 ○ 観光客がゆったりと歩きながら、歴史的な街並みを観光すること がで  きる

(6)取り組むべき主要な施策
 1.歩行者専用空間の確保・拡大
 2.ゾーン30による「人」を最優先とする歩行者・自動車が共存す る
  交通形態
 3.自転車の交通体系の整備
 4.公共交通利用の推進
 5.自動車交通の総量抑制
 6. 交通安全の啓発

(7)次世代交通政策の進め方
【平成24年度】
 ○ 「新しい交通体系によるまちづくりビジョン」の策定
 ○ 基礎データの調査、収集
 ○ 市民、関係機関・団体との議論

【平成25年度】
 ○ 「実行計画」の策定

【平成26年度以降】
 ○ 事業の実施
 ○ 事業の評価、検証、見直し

<研修時の主な質問事項>
Q:まちづくりビジョン策定はどのようなメンバーで行ったか。
A:次世代交通政策検討委員会において作成。
 次世代交通政策検討委員会は交通やまちづくりに直接関係のある団体より
 推薦されたメンバーで結成されている。
 <メンバー>
 ・公共交通に係る国・県関係者
 ・公共交通事業関係者
 ・地域及び公共交通利用者代表
 ・有識者
 ・公募者
 ・松本市

Q:この基本方針は何年計画で取り組まれるのか。
A:この計画は市民と共同で進めて行くということで考えており、計画年限は
 特に定めていない。
Q:まちづくりビジョンとして新しい交通体系を考えていくということだが、
 交通政策を進めていくことによって中心市街地の活性化にどうつながって
 いくか。
A:次世代交通政策については、中心市街地に人が集まる仕組みをつくるとい
 うことで新しい交通体系を考えている。
 松本市の場合、車を優先にした道路整備をしたことによって、通過交通は
 増えたが中心市街地を訪れる交通を確保できなかったという反省がある。
 今まで車中心だったものから歩行者、自転車、公共交通を優先するまちづ
 くりをするということだが、それがすぐ市街地の活性化に繋がるとは考え
 ていない。市街地活性化のためには商店街の魅力を上げるなど商業者の努
 力も必要となってくる。
 この基本方針は長いスパンでの松本市の方向性を示したものであり、これ
 からの具体的な計画も含めて市民の皆様と話し合っていきたいという方針
 を今やっと示したという段階である。
●「ゾーン30」への取り組み状況について(中町通りの取り組み)
 (1)「ゾーン30」を取り入れた経緯
  松本市は城下町であり、昔の道路が江戸時代のまま残っているため狭い
  道が多く、交通的には混雑等が多い。
  中心市街地のまちづくりについては、松本駅前の再開発を昭和42年か
  ら平成14年まで約190億円をかけて行っている。
  その中で中町については、区画整理対象外であったことから、取り残さ
  れ寂れてしまっていた。
   そこで失われた集客を取り戻すにはどうしたらいいか、地元住民がま
  ちづくり研究会を立ち上げ、研究し、方針を決め、それに市が相応する
  形で街並み環境整備事業を取り入れて中町を整備してきたという経緯が
  ある。
   当時は交通政策というのではなく、街並み整備ということで、歩行者
  が歩きやすい道をつくったが、中町についてはかなりの交通量があり、
  走行速度も速いため、住民や観光客からは苦情が出ていた。
   そんな中、平成22年に松本市議会建設委員会より中町通りを歩行者
  優先とする「ゾーン30」の理念を取り入れた整備をしてはどうかとい
  う提言書が提出された。
(2)建設委員会の提言内容
  松本市建設委員会は「ゾーン30の取組みについて」の提言書の中で、
  中町通りに対し、次のように提言している。
 ○ 車道幅員を2.8m以下とすること
 ○ 狭めた道路幅員については、路側帯として両側同等に直線で拡幅す
  る、あるいは、直線車道ではなくS字車道として視覚的に速度 を抑制
  する方法とすること
 ○ 車道と路側帯については、景観に配慮しながら色分けすること
 ○ 公共サインなどで自動車は歩行者に対し、細心の注意を払う道路であ
  ることを明示すること
 ○ 進入してくる車、自転車が確実に一時停止する対策(ハンプ、イ メー
  ジ狭さく等)について検討すること
 ○ これらの施策展開にあたっては、計画段階から住民参加で推進すること
 ○ 一定期間経過後、地域住民、観光客などの歩行者に、アンケート調査
  などで安心安全の空間となったか、歩行者は増加したか、など成果を確
  認すること

(3)中町通り交通社会実験【別紙1 事例?】
1.実験趣旨
  今後の交通政策において、ゾーン30の理念を取り入れた整備を実施し
  ていくために、中町通りをモデル地区として、社会実験を実施するもの
 2. 実験内容
  中町通りの通過交通の走行速度を抑制するために仮設のハンプを設置
  し、速度調査、アンケート調査等を実施する。
 3.検証方法
  アンケート結果、速度調査結果を分析し、ハンプ設置前の交通量調査と
  比較検討した中で効果を検証する。
 4.設置する実験設備
 【サイン曲線型ハンプ(硬質ゴム製)】
  幅 4m × 長さ 5m・6m・7m × 高さ 0.1m
 5.
調査項目
 <速度調査>
  7時から19時に通過する速度調査を4日間実施
 <アンケート調査>
  自動車運転手、自転車、歩行者、地区住民にアンケートを実施
  調査結果
 <速度調査>
  設置前 平均29km/h
  設置後 平均24km/h
  ハンプを設置することにより平均速度が5km/h下がり、効果は認められ
  たが、平均速度を落とすことよりも、最高速度を落とすことが重要であ
  り、歩行者の安全にも繋がる。
 <アンケート調査>
 ○ハンプの色が赤く、街の景観に合わない。しかし黒いと見えない。
 ○慣れてくるとスピードを出して走っている。
 ○ハンプでバウンドすることにより騒音が起こり、夜中も眠れない。 ま
  た振動も激しい。
 ○自転車・歩行者からはハンプがあることによって、ハンプの横を 通ら
  なければならなくなりかえって危ないという意見。
 ○ドライバーからは速度を落とす意識は上がるので設置した方がい いと
  いう意見。
※以上の結果によりハンプによる速度抑制を断念する。

(4)更なるゾーン30への取り組み
 <視覚ハンプの設置>
  騒音、振動の起こらない視覚ハンプを設置するも、100数十台中数台
  しかブレーキを踏まず、効果はなかった。
 <路肩の拡幅>
  アンケート調査の結果、1番効果のありそうなものとして挙げられたの
  は歩行空間を広く取るということであった。
  それは建設委員会提言書に書かれてあることと一致していた。
  路肩部分は石畳とし、車の走行空間と歩行者空間を明確にしている。
  ドライバーも石畳の部分は歩行者空間であるという認識でスピードを落
  とすという傾向があり、地元の住民からも「かなり安心して歩けるよう
  になった」「車が気にならなくなった」という声が出ており、効果が認
  められた。
   松本市では、この中町通りの事例をモデル事業として、ゾーン30の
  理念に基づいた整備を今後、中心市街地全体に広げていくとしている。

<研修時の主な質問事項>
Q:中町通りの歩行者数は。
A:松本市の1番の観光地であり、かなりの歩行者がいる。
 歩行者空間を整備したことにより歩行者数が増えてきている。
Q:歩道部分(石畳)と車道部分の高さは同じか。また、縁石等で区切ってい
るのか。
A:歩道という考え方ではなく、路肩という考え方になっている。
 松本市の道は狭いため、歩道と車道を分けるのではなく歩車共存という考
えで整備を進めている。
Q:路肩が広くなったことにより、その部分に車を停める人が増えるのではな
いか。
A:道路交通法では外側線のないところは全て車道という考え方になる。
 あえて外側線を引かないことで駐車違反の取り締まりの対象としている。

3.まとめ
  松本市は、「健康寿命延伸都市・松本」を将来の都市像と掲げ、誰もが
 健康でいきいきと暮らせるまちづくりを目指す重点施策の1つとして、次
 世代交通政策を推進し、自動車に過度に依存しないまちをつくり、自転車
 や公共交通の利用と歩行者を優先する施策を進め、多くの人々がまちなか
 を歩くことにより、健康の増進やまちのにぎわいの復活を図っている。
 次世代交通政策は、国内に他に事例のない新しい取り組みであり、その効
 果等は未知数である。今後も新たなデータの調査・収集・分析を進め、市
 民、関係機関・団体と幅広く将来のまちづくりに向けた議論を重ね、市民
 協働による施策の推進が肝要である。
 しかしながら、少子高齢化社会の中、将来を見据えた施策に取り組むこと
 は重要であり、吉野川市においても今後考えていくべき取組でないかと考
 える。
 また、松本市は「ゾーン30」という新しい交通施策にいち早く取り組
 み、市議会建設委員会でも調査研究をし、その提言書を受けて交通社会実
 験を繰り返し行っている。
 通学路や生活道の安全を確保することは、将来を担う子どもたちの命を守
 り、地域を活性化させるためにも大変重要なことである。
 
  吉野川市においても、今後、新築移転される麻植協同病院の周囲道路は
 歩車共存道路をして整備される計画であり、松本市中町通りの実験結果は
 参考になるものでないかと考える。

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